半笑い

今日電車に乗っていて、ふと高校の時の友人Mの事を思い出した。
Mとは高校の部活が一緒で、3年間の高校生活の思い出話には、Mという存在がもしいなかったら、とてもつまらないものではなかっただろうか、と言っても過言ではないくらい強烈なインパクトを持つ存在であった。

Mは大阪出身で中学校まで大阪で過ごしていたので、普段からものすごい軽快に大阪弁をしゃべる奴だった。
普段から、大阪独特の切れ味鋭い突っ込みと、リアクションで校内では知らないものがいない程の人気者ではなかったが、そのドリフ張りの体を張ったコント(コントと呼ぶにはもはや神の領域を越えている)はバトミントン部という限られた中でかなりの評価を得ていた。


雪のある日、Mと同じくバトミントン部の友人Fの二人で自転車にて登校していた時、
友人M「F、そこ凍ってるか気おつけ・・・うわっ」

そのままMは自転車で転び、畑の中へ3回転半転がったという。友人Fへ忠告した矢先の、まさに奇跡のタイミングである。


友人MとFと私の3人でスキーに行った時の話である。Fと私はスノボーでMはスキーで一番上のリフトまで行った。そこはかなり急な斜面で正直、スノボー初心者の私とFには滑れる訳もなく、当然のごとくMのスキーレベルもボーゲン止まりなので滑れる訳がない。Mが、
「こんなの滑れねー、あほちゃうねん」
などと言っていたのでかまわず頂上においていき先に私とFは、転びながらも頂上より100M程降りてきた。Fと一緒に、
「M遅いね。何やってんだろ。」
と振り返った瞬間、頂上にMの姿はない。あるのは、Mのスキー道具だけ。そんな神隠しのような現象がと思ったのもつかの間、

「助けてくれ〜」

それはまるでボブスレー日本代表にでもなれるのではないか、と思わせる位のスピードで我々2人を一瞬にして抜かしていくMの姿。おおよそ300M位は滑っただろうMは、あやうくあと10Mで崖に落ちる寸前の所で止まった。まさに命がけの熱演である。しかもどんな状況においても、笑いは忘れていない。我々2人の横を凄まじいスピードで抜けていったMの表情は「半笑い」であった事は未だ記憶に新しい。


その後Mは、大学を卒業し、某有名デパートに就職したそうだ。
Mとはもう4年位会ってないが、どんな環境に於いても、けして忘れる事のないその笑いの精神を新しい職場に於いても発揮し続けることを私は願ってやまない。そんなMとの思い出を思い出してしまった私は朝の電車で一人「半笑い」であった。